月見草アニメ!

ブログ名は「王や長嶋がヒマワリなら、オレはひっそりと日本海に咲く月見草」という野村克也氏の名言からつけました。月見草のように、目立たないながらも良さがあるアニメやゲームについて、語ることを目指します。

女性声優によるアカペラプロジェクト「うたごえはミルフィーユ」がオタクにぶっ刺さりそうだという話

GW初日。前夜の仕事の疲れをとるべく昼まで寝て、ぼんやりした頭でTwitterを眺めていると、フォローしているアニメ・声優系のニュースアカウントが発信した一件のツイートが目に入りました。

「女性声優による超本気アカペラプロジェクト『うたごえはミルフィーユ』……?」

何となく惹かれるものを感じて、私はそのツイートのリンクをクリックして記事を読みました。どうやら、前日に発表になったばかりのプロジェクトのようでした。ボイスドラマ形式で動画が配信される予定のコンテンツとのことですが、現時点で公開されているのはキャラクターを紹介する公式HP、PVと声優さんが歌うアカペラの動画のみでした。

しかし、たったそれだけの情報しか公開されていないにもかかわらず、私はどうにもこの作品が自分の好みにぶっ刺さるコンテンツになるような気がしてならないのです。

まだ始まってもいないプロジェクトについてわざわざ記事を書くのも変ですが、この作品に期待するところを書いておきます。

 

「輝かなくても、青春だ。」というキャッチコピーが刺さりすぎる

日蔭者、という言葉があります。人間の世に於いて、みじめな、敗者、悪徳者を指差していう言葉のようですが、自分は、自分を生れた時からの日蔭者のような気がしていて、世間から、あれは日蔭者だと指差されている程のひとと逢うと、自分は、必ず、優しい心になるのです。――太宰治人間失格」より

 

公式HPを開くと、まず6人のキャラクターが描かれたキービジュアル、そして「――輝かなくても、青春だ。」というキャッチコピーが目に入ります。

うたごえはミルフィーユ(うたミル) 公式サイト (utamille.com)

このコピーがオタクの心にぶっ刺さるんですよね。オタクとは、キラキラした青春とは無縁の、暗い青年期を過ごしてきた人種です。ですから、冒頭に引用した「人間失格」の一節のように、自らと同様の境遇にある人物を見ると、それはまあ優しい心になるわけですよ。

HPのキャラクター紹介を読んでみると、主人公の小牧嬉歌(うた、と読むらしい)については、以下のような記載があります。

歌うことが大好きな少女。ただし、極度の人見知りの内弁慶でヘタレでチキン。高校で軽音部デビューしようと、部室を覗くも部員たちの輝かしいオーラにビビり、2週間以上挙動不審にうろつく。(中略)アカペラのマイナーさ、地味さに戸惑い続けるもハモることの楽しさに目覚め始める。

この設定ですよ。これこそ俺らと同じ人種です。そうだよね、軽音部みたいな日なたの世界に生きる人間って、俺らと別世界の住人だよね、と共感の嵐です。日なたの人間じゃなくて、日蔭に生きる人間。そんな日蔭者と、アカペラの地味さ、マイナーさを結び付けた設定は、オタクの心にぶっ刺さるファインプレーと言えるでしょう。

キャッチコピーから察するに、キラキラした青春を持ちようもない暗さを抱えた日蔭者たちが、彼女たちなりの青春を見せてくれるのでしょう。それがどのように描かれるのか、オタクにとっては今から楽しみでなりません。

 

「コンプレックス」が刺さりすぎる

公式サイトには、「アカペラ×女子高生×コンプレックス」という作品コンセプトが記載されています。

コンプレックス……!コンプレックスの塊みたいな人種であるオタクには刺さりすぎるワードです。

キャラクター紹介を見ても、チキンな嬉歌だけでなく、「周囲に高いレベルを望みトラブルを起こしがち」な繭森結、「声が低いことで周囲にからかわれた過去がコンプレックスになって」いる熊井弥子など一癖も二癖もありそうな人物がそろっています。

コンプレックスを描くであろうこの作品に期待するところは、コンプレックスをアカペラ歌唱に昇華することです。

公開されたPVを見ると、「なんでいつもうまくいかないんだろう」「一緒にやろう……できない人間同士」など、コンプレックスありありなセリフがあることがわかり、これだけでオタクは叫びたくなりますが、注目すべきなのはそれだけではありません。「迷ったら私を見ろ」「これだけは、逃げない……!」など、コンプレックスを乗り越えて歌唱に臨むのであろうことを想像させるセリフもあるのです。

youtu.be

歌についての文脈が加わることでその歌の与える叙情的な側面が強くなるのは、いわゆる「歌もの」のコンテンツが持つ特徴です。本作においてぜひ期待したいのは、このコンプレックスの克服を描写して歌唱につなげることで、曲が持つ魅力が最大限に引き出されることです。

コンプレックスを抱える少女たちが、それでも自らの葛藤と向き合い、それをアカペラ歌唱に昇華する――。ボイスドラマとアカペラ歌唱という二本柱の展開が予想される本作ならば、そのような描写が可能でしょう。始まっていないのに気が早いですが、そんな場面を目にした日には、面倒くさいオタクである私は彼女たちに感情移入し過ぎて、泣いてしまうかもしれません。

個人的な好みを言えば、私は一般的な「部活もの」のコンテンツに興味が持てません。描かれる部活そのものには興味がないからです。そうではなく、「部活もの」であっても、その部活に人物の価値観や人生観が投影され、「部活を描く」のではなく、「部活を通して、人生を描く」ものには惹かれます。本作からはそのような作品になる予感を覚え、期待を禁じえません。

 

実際のアカペラ動画が刺さりすぎる

公式チャンネルでは、メンバーによる奥華子「ガーネット」のアカペラカバー動画が公開されています。

youtu.be

初めて聞いたとき、美しいハーモニーに鳥肌が立ちました。今日聞いたばかりなのにもう10回以上ヘビロテしています。個性もバラバラな6人の歌声が織りなす旋律に、心が引き付けられてやみません。

小森嬉歌役の綾瀬未来さん。現役高校生ということですが、無二の声質で、ずっと聞いていたくなる歌声を持っています。これは逸材を見つけてきたな、ポニキャ……!

繭森結役の夏吉ゆうこさん。個人的には他作品で抜群の歌唱力を持っているのを知っていましたが、本作においてものびやかで力強い歌声を披露しています。

古城愛莉役の須藤叶希さん。天使のような透き通った独特の歌声で、その声を少し聞いただけで天に上るような不思議な気持ちになりました。

近衛玲音役の松岡美里さん。これまた独特のハスキーなアルトの声を持っていて、3rdコーラス担当ですが、ソロ歌唱も聞いてみたい印象を受けます。

ベース担当、熊井弥子役の相川遥花さん。歌よりもPVを見た時の喋っている声の低さにびっくりしました。3:18あたりで主旋律の1オクターブ下を歌っていますよね。

ボイスパーカッションの花井美春さん。本当にボイパ初心者なの?ボイパというものを知らな過ぎて、最初何か声以外の楽器を使っているのかと思いました……。

以上のように全く個性がバラバラで声質が被るところのない6人の歌声ですが、それがきれいに一つにまとまってしまうのだからすごいです。ここまで歌えるまでに演者の皆さんが積んだ修練を想像すると、頭が下がります。

演者の皆さんがこれほど歌えることを考えれば、前述のように今作が持つ物語性と音楽性が合わさった時の威力は大きなものになるでしょう。今回はカバー曲でしたが、オリジナル曲もあるのでしょうか。もちろんカバーだけでも素晴らしいのでしょうが、やはりオリジナル曲もあると嬉しいですね。楽しみでなりません。

 

 

以上、始まる前から気の早すぎるオタクの面倒くさい語りでした。刺さるコンテンツになりそうなにおいがプンプンする本作のことを、心から応援しています。