花守ゆみりがリステを卒業する意味~にわかリメンバーズが声優バイブルを読んでからリステ3rdに行って考えたこと~
はじめに
11/17(日)、「Re:ステージ!」PRISM☆LIVE!3rd STAGE~Reflection~」に行ってきました。アニメから「Re:ステージ!」(以下、リステと呼称)に入ったにわかでしたが、はっきり言って、最高のライブでした。リステ以外のライブにはそれなりに行っていますが、これほどのライブはほとんど経験がないくらいです。せーので跳べって言ってんの!で跳びまくり、大好きなKiRaReの曲を聴ける幸福感に包まれ、ステラマリスのステージにに気分が高まりすぎて何度も絶叫し、トロワアンジュの歌声に聞き惚れ、テトラルキアのリーダーになりました。
しかし、最高のライブだったからこそ、リメンバーズの胸のどこかに引っかかっている、「あのこと」について、整理しておきたいのです。
にわかの身で語るのは恐縮なのですが、「あのこと」について、どうしても胸の中にある思いを吐き出しておきたいのです。
花守ゆみりさんのリステ卒業
リステ3rdライブを楽しみにしていた去る11月1日のことです。twitterを眺めている筆者の目に、リステ公式のツイートが飛び込んできました。
伊津村陽花役 花守ゆみりさんに関してのお知らせ https://t.co/msLXAm6p78
— Re:ステージ!公式 (@rst_project) November 1, 2019
ツイートを見た瞬間、何となく内容を察しました。
読むと、膝の不調のため、伊津村陽花役の花守ゆみりさんが今回の3rdライブをもってリステを卒業するという内容。にわかリメンバーズである筆者にとってもショッキングなお知らせです。その日は、2ndライブのBDを再生し、オルタンシアのライブシーンだけをぼんやり眺めて終わりました。
筆者にとって初めてのリステのライブで卒業という形になったわけですが、そうなった以上、ライブでしっかりと目に焼き付けよう、と決意しました。
ところが、それからさらに数日たったころ、どうやら花守ゆみりさんがネット上で炎上しているらしいと小耳にはさみました。
なんでも、インタビューで花守さんがイベントを嫌がっている、アイドルのようなことをやりたくない、と語ったいうような内容。これが批判されているようでした(ようでした、というのは、直接そういった記事を目にするのは嫌で、見ていないのです)。
これから花守さんが「アイドルのようなこと」をやる現場に行く身としては心中穏やかではありません。もしかして、花守さんは嫌だと思いながらライブに出演していたのか、とまで想像しました。これは真相を確かめねば。噂のインタビューが載っている「声優バイブル」を購入しました。
声優バイブルを読んで
実際に声優バイブルの記事を読んで、花守さんが語っていることを確かめてみました。少し長いのですが、引用します。
私たち声優が前に出て、(中略)キャラ準拠で歌ったり踊ったりしますけど、それがどうしても自分の中で受け入れられないんです。その子を背負って人前に出るというのは、その子の何かを変えてしまう気がして。生身の声優が出るとどうしても自分が出てしまうから、それが許せなくなってきたんですよね。
声優に正しい形はないと思うんですけど、あくまで自分の中では、キャラクターを陰から作る作り手でありたいという気持ちが、20歳ぐらいから強くなりました。(中略)私自身がキャラの服を着てそのこの歌を歌うのは、だんだん受け入れられなくなってきたんです。他の人がやっているのを見ると感動するんですけど、自分がやるのはどうしてもモヤモヤして。このモヤモヤがあることで、ますますキャラクターじゃなくて自分を認識されてしまうんじゃないか、それが嫌だなって。
花守さんはこう続けます。
声優としてどうあるかというのは本当に広いから人それぞれだと思うんですけど、アイドルをするのが普通で歌って踊って、というのは無理になっちゃったんです。だって素の自分が出ちゃうから。声優じゃなく、キャラクターを届けたいのに。歌ったり踊ったりするのもキャラ準拠。なのに、キャラクターじゃなく声優がかわいいという見られ方をするのが、たぶん嫌だったんですね。
この仕事を楽しいと思ったのは、表現者のすごさに感動したから。だから、自分も声の表現者として受け入れられたかったんだと思います。
読んでみると、納得の声優観です。つまり、声優である自身が表に出ていくことで、キャラクターを壊してしまうことが嫌であり、自身はあくまでキャラクターの声に徹したいということなのでしょう。私自身、声優がキャラ準拠で歌ったり踊ったりするライブに行こうとしているわけで、そういったものが好きなわけですが、こういった声優観自体は至極真っ当だと思いますし、声の演技に対するこだわりも、花守さんの演技を知っているとうなずけるものがありました(花守さんの演技をご存じない方は、結城友奈は勇者である―鷲尾須美の章―の4話をご覧ください)。
念のため、「こういった声優観を持っているため膝の不調を口実にリステを卒業するのだ」と考えるのは邪推というものです。インタビューには、幼少期に膝を故障したことも書いてあり、膝の不調というのは本当でしょう。
インタビュー全文も興味深い内容でしたので、ご興味がおありの方はぜひ声優バイブルを購入し、全文をお読みください。
インタビューを読んで、花守さんが抱えている葛藤を思いました。確かに、歌って踊ることに対する葛藤はあったのです。しかし、不思議と嫌な気持ちにはなりませんでした。むしろ、こんなに真摯に声優という仕事に取り組んでいる花守さんへの共感が頭をもたげてきました。ともあれ、当日は花守さんを応援しようと心に決めました。
実際にライブを見て
当日のオルタンシアのパフォーマンスは素晴らしいの一言でした。膝への影響が考慮されたのか、他のユニットに比べて曲数は多くなかったものの、筆者は「Yes,We Are!!!」でウィーアーしまくり、「Purple Rays」でオーライしまくり、「君とインフィニティ」でやっほーしまくりました。
特に伊津村陽花のソロ曲「アイノウ・アイノウ」は、傘を使った演出が見事で、終始目を奪われていました。見ながらライトピンクのペンライト振っていたはずなのですが、どんなふうに振っていたか記憶がありません。表現者としての花守さんの矜持を見た気がします。そこにいたのは、花守ゆみりではなく、伊津村陽花でした。
ラストの「Dear マイフレンド」では、両隣のオタクがタオルに顔をうずめたことに加えて、相方である小澤亜李さんの歌声も最後は震えているように聞こえ、つられて思わず目から梅昆布茶が……。
最後に、花守さんがリステに対する愛を語ったのが印象的でした。確かに自らが歌い踊ることに対する葛藤はあったのかもしれません。しかし、それはリステ、伊津村陽花というキャラクターを愛しているからこその葛藤だったのでしょう。
最後は花守さんも小澤さんも笑顔だったと思います。
花守ゆみりがリステを卒業する意味
花守さんのリステ卒業が発表されたとき、花守さんへの批判とともに、リステ運営を批判する向きもありました。
・膝の不調が理由というが、膝に負担がかからない形でライブをすればよい
・声優なのだから、声を務めることが最優先のはず。ライブは演出面の工夫をすれば何とでもなるはず。声と歌のみで伊津村陽花役を続けさせることができるはずだ
というような意見です。当初は理がある意見だと思っていましたが、3rdライブを見た今では、それは違うと思ってしまいます。
そもそもリステというコンテンツは、アニメになっていない今までは中の人ありきでした。動くことのないキャラクターに対して、声優さんがライブを行うことによって命を吹き込むのです(アニメからリステに入った筆者がアニメ化以前のリステを語るのはちゃんちゃらおかしいのですが、ご容赦ください。)。
アニメ化が実現した今は違います。3rdライブのタイトル「Reflection」とある通り、リステのライブが今後目指すところは、アニメのライブへの反映、そしてアニメの再現です。2ndライブ、1stツアーまでの情報はリステの公式サイトにあるのに対し、今回の3rdライブ、そして来年に控える各ユニットの1stワンマンライブはアニメリステDDのサイトに記載があり、リステの公式サイトにないのが象徴的です。
実際に3rdライブを見て、そのことを強く実感しました。特にKiRaReの「OvertuRe:」。アニメ最終話のライブ映像がバックに流れ、その映像とシンクロして、まったく同じ歌とダンスをKiRaReの声優陣が披露しました。あまりの尊さに、本当にこの世の光景なのか、自分は今美しい幻を見ているのではないかという感覚に襲われました。アニメで碧音お姉ちゃんが「舞菜……!」と叫ぶのとまったく同じタイミングで、口から「舞菜……!」という音がこぼれ、そして泣き崩れました。
アニメの再現を目指すという点ではオルタンシアも同じです。「Yes,We Are!!!」では、バックにアニメの映像が流れ、それに合わせて小澤さんと花守さんが歌い踊りました。……コールを入れるのが楽しすぎて、詳細な動きはよく覚えていませんが……。
今後リステのライブが目指す、声優の歌とダンスによるアニメの再現出、感動の再生産。それは、膝の不調を抱えたまま挑戦するにはあまりに険しすぎる道であるし、そもそも声優として表舞台に出て歌い踊ることを受け入れられないという花守さんの思想と明らかに相いれないものです。
花守さんのリステ卒業は必然であったというべきでしょう。
ただし、先に述べたように、花守さんのリステに対する愛は真実であると信じてやみません。
リステのアニメ3巻に付属しているブックレットのインタビューでも、以下のように語っています。
卒業すると決まったときは、すごく寂しくって…長く演じさせていただいたからこそ、彼女のことが大切で大切でたまらなくって。だからこそちゃんと彼女には輝く場所にもっと立ってほしいなって思っているんです。そのためのお別れなんですけど、これからのステージでもふたりには輝いてほしいなって思います。
愛しているからこそ、そこから離れるという決断をしたのだと思います。愛は花守さんからリステへ向けられたものだけではありません。相方の小澤さんはもちろんのこと、ライブで「Dear マイフレンド」の後に花守さんと小澤さんに抱き着いた空見ゆきさんを始め、多くのキャスト陣が花守さんへの想いを言葉にしていますし、何よりライブの空間は、花守さんに対するリメンバーズの愛で溢れていました。
とっても幸せな時間でした。
— 花守ゆみり (@hanayumi09) November 17, 2019
陽花と紫ちゃんには、出会ってから今まで本当に沢山の思い出と宝物をもらいました...これからも大好きな彼女達の輝くステージを見守って頂けますと幸いです。
今までもこれからもずっと友達!!!!
ずっと見てるからね、大好きだよ#リステ pic.twitter.com/rjldpo2WKE
リステで仲良くなって今では一緒に2人でご飯行く仲になって…本当にだいすき。
— 田澤茉純 (@masu_mikan) November 17, 2019
ゆみりちゃんと一緒のステージに立ててすごく楽しかった!
アイノウ・アイノウもゆみりちゃんの気持ちが伝わってきて袖で泣いてしまったよ
私が言うのもあれだけど陽花ちゃんと出会ってくれてありがとう
すきだよー pic.twitter.com/fNZjUINAIN
リステと花守さん、相思相愛であるのに、お互いに離れることになってしまったのは一見悲劇のように思えます。しかし、これがお互いにとって幸せになる選択だったと言える日が来ると信じています。花守さんの卒業は寂しい限りですが、まだ見ぬ新生オルタンシアがどのような景色を見せてくれるのか、楽しみです。
リステが今後、アニメをライブに反映したコンテンツとしてますます発展していくこと、そして花守さんが声の表現に専念することで、声優としてますますご活躍されることを祈念します。
長々と書いてしまいましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。